上機嫌でいこう。

本とか、音楽とか。本は新書を読むことが多く、音楽はクラシックやサウンドトラックを中心に。映画やDVDも好きで見ています。

『現代語訳 貧乏物語』(河上肇著・佐藤優訳)を読んで

こんばんは。

佐藤優さんによる『現代語訳・貧乏物語(河上肇著)』、講談社現代新書(2016年6月刊)をKindleで読了しました。簡単に感想を付しておこうと思います。

 

現代語訳 貧乏物語 (講談社現代新書)

現代語訳 貧乏物語 (講談社現代新書)

 

 

私はこの本を、「貧乏な青年のトホホな人生」といった筋書きを想像して読みましたが、さにあらず。100年前の「格差問題」に切り込んだ、「善意」の一冊であったと思います。佐藤さんによる現代語訳は、恐ろしく読みやすいものでした。

ここでいう「貧乏」とは、自分の健康さえも十分には維持できないほどの困窮状態にあるか、その線上にある人たちの状態を指しています。

貧乏問題、貧困の根絶の処方箋として、河上肇は「贅沢の禁止」「分配の是正」「社会体制の変革」を挙げ、「贅沢の禁止」こそが第一だとしていました。これは、生産における分配の問題、つまり生産力が「贅沢品」の生産に集中してしまっており、生活必需品に十分回ってこないことこそが問題であるとしてからです。しかし河上は、究極的には人間性の開発・開花こそが「貧乏問題」の根本的な解決であるとしているとしています。

佐藤さんは、この本の「解説」の中で性善説に立つ河上に対して、性悪説に立つピケティという対立項を立てています。河上が、心ある富裕層が率先して贅沢をやめることで十分かつ必要な生産力が生活必需品に当てられることから貧乏問題が解決できるとしていますが、ピケティは国家・官僚による再分配に期待を寄せています。その一方、佐藤さんは再分配に国家・官僚が関わることで、その「肥大化」を危惧しています。

また、佐藤さんが特に期待を寄せているのが、教育という未来への、人への投資です。公教育は大学まで基本的に無償とすることを主張しています。私も、「人を育てる」ことを放棄したこの社会にあっては、消費税率を少しばかり上げることで筋道が立ちそうな教育の充実に期待を寄せるものです。

最後に、このような「現代語訳+解説」という試みはもっとあっていいかと思うとしておきたいと思います。どうも現代は、過去の遺産を継承し、活かすということの努力が足りていないように思われます。少しずつでも、こうして「歴史」に学ぶことが繰り返さればいいだろうなと思っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。