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上機嫌でいこう。

本とか、音楽とか。本は新書を読むことが多く、音楽はクラシックやサウンドトラックを中心に。映画やDVDも好きで見ています。

【ネタバレ注意】フィリパ・ピアスの『トムは真夜中の庭で』(岩波少年文庫)を読んで

読書 岩波少年文庫

おはようございます。

昨日(11月14日)の「振り返り」でも触れたとおりに、フィリパ・ピアス作の『トムは真夜中の庭で』(1958年)を読み終えました。高杉一郎訳、岩波少年文庫(1975年刊。2000年に新版)。 

トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))

トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))

 

 

【あらすじ】

弟・ピーターがはしかにかかってしまったせいで、トムはおじさんの家に「隔離」されることになってしまった。おじさんの家での生活は退屈だったが、ある夜、大時計が13回時を告げた。家全体に促されたような気がしたトムは、そこにあるはずのない庭園を見つけて足を踏み入れることになる。庭園で見かけた少女・ハティ。トムの姿は、このハティにしか見えないようだった。

庭園とベッドとを往復するようになったトム。その庭園での時間の流れは、一様ではなかった。ある時は逆に流れたり、またある時に訪ねると、季節が変わって長い時間が過ぎたのがわかることもあった。

自分の世界へ戻り、ハティについて調べるトム。すると、ハティは100年ほども前の服装をしていることがわかったのだ。

自分の家に帰りたくない。トムはそう感じるようになったが、家に戻る日が近づいた時に庭園を訪ねようとしたところ、そこには長じたハティがいた。ハティは、トムとではなく、別の男性と話し込んでいたので、その場で眠り込んでしまい、自分のベッドで目を覚ました。

今日は自分の家に帰らなければならない。嫌がるトムは、ハティの名を呼んでしまった。それを聞きつけたのは、大時計の持ち主のバーソロミュー老夫人だった。

果たして、ハティはバーソロミュー夫人の幼い頃の姿であり、彼女は自分の夢の中でトムと遊んでいたのだった。トムはバーソロミュー夫人と仲良くなり、両親の待つ家へと帰っていった。夏の思い出を胸にして、少年は一歩成長したのだろう。

【感想】

「とんでもない波乱万丈の展開」を期待すると肩透かしを喰らいます。

例えばトムは、庭園で遊んでいても、戻ってくればほんの僅かしか時間が経っていないことに気づき、「現実の世界」やトムの家には戻りたがらなくなります。ここで、安っぽい展開を期待すると、トムがそのまま帰ってこない=死んでしまう、という予想をしてしまいます。

また、長じたハティとトムがスケートで遠出をするシーンがありますが、ここでも私は、氷が割れてハティが溺れ死ぬという展開を予想してしまいました。トムだって、ハティを幽霊だと思っていたのですからねw あああ、私って(笑)

ともあれ、少年が両親の庇護にあったところから、異なった世界を経験することで成長するというのが、この話の基調にもなっていると思いますが、それをそのままで提出すると、何とも陳腐なものになってしまいます。そこに、老女の夢という要素を持ち込んだことでファンタスティックに物語を展開させることに成功していると思われました。

一定の期間をおいて再読すると、また味わい深く読めるのではないかとも思っています。

【若干の追記】

以上の「下書き」に、若干の追記をいたします。

先に「とんでもない展開」は期待しない方がいいと書きましたが、意外に重要かもしれないと思います。これが50年経った現代の作家によるものなら、ハティは幽霊として現れるだろうし、トムも「この世」には帰ってこないだろうと思うんです。何といっても、その方が現代的には「盛り上がる」からです。しかし、ピアスはそうしなかった。2人ともに、「生きている」ということに価値を見出したのではないでしょうか。私にはそんな気がしています。